2010年05月08日の記事

病院に行こう:談話室物語

病棟には「談話室」というのがある。通常は患者が面会者とお茶を飲みながら談話ができるスペースなのだが、動きが制限されている患者にとっては、唯一ベッドサイドではない外空間的スペースでもある。なので、患者はときおりここを訪れてはテレビを見たり世間話をしたり、ただただぼぅっとしたりして、ベッドで気が滅入るのを押さえているのである。また、僕が入院していたフロアはこの談話室がICUやCCUの集中治療室の横にあるので、救急車で運ばれた患者の家族が待ち合いに使ったりするスペースでもある。当然のことながら、深刻な状況も展開しているわけで深夜から待ち疲れた家族が「おじいちゃん、もうダメらしい」などと携帯電話で親戚に連絡している様子なんかも時おり見受けられて、様々な物語が小さな部屋に繰り広げられている。僕は朝5時に目が覚めると、この談話室へ行くのが日課だった。まだ、誰もいないこの部屋で、窓際に椅子を置き、隠し持った少量のインスタントコーヒーをお湯に溶かしてすすりながら、丘の上に朝日が上がってくるのをずーっと眺めているのが好きだった。毎日同じ景色を眺めているのに不思議と退屈ではない。丘と空をゆっくり眺める時間は実に心穏やかでいい時間なのである。