20年目の楽しい夜


 昨晩はとても楽しい夜だった。20年ほど前に僕が豊田市で店舗デザインを手がけたパブレストランのオーナーから、借地契約を終えてこの3月いっぱいで店を閉店するので、ぜひとも語り合いたいとお誘いを受けたのだ。店の名は「MERCADO/メルカド」。サンタフェの酒場をメインコンセプトにして、部屋ごとに段差のある空間設計や、椅子や家具のオリジナルデザイン、自ら造った木製装飾品やサインなどなど、当時、オーナーも僕も設計士も一緒になってずいぶんノリノリで造った店だ。若かったなぁ。おかげで豊田市の都市景観賞もいただいた。リーズナブルでおいしい料理と豊富な酒類、そしていいバーテンダーがいるということもあって人気店らしく、昨晩も満員状態だった。席数の多いこういう大型店舗を当時のコンセプトのままに、20年営業を続けるのは並大抵ではない。たいがいは迷い変形し店替えをしてしまう。当時参考にさせてもらった店やライバル店は今や皆無くなってしまっている。「あなたのコンセプト設計が良かったのだ」とオーナーはおだててくれたが、「いい時に欲をかかず、悪い時にうろたえず」といった忍耐の経営と努力があったからだと思う。20年で5人の若い経営者をこの店から排出し、昔の常連の子供の世代がまた店にやってくるという幸せもつかんでいる。「20年の営業と言うのは商売と言うよりひとつの文化を育むことでもあると思うんだ」とのオーナーの話に、テキーラやらラムやらすっかり酔ってしまった。「居心地のいい空間なのに壊してしまうのは惜しい」とお客さんから声も上がっていると言う。うれしいねぇ。この店は今の店長がまた豊田のどこかで同じ名前で看板や調度品ごと引き継いでオープンする予定だという。
「MERCADO」豊田市小坂本町5-13-5


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